郷土資料 常設展示 


郷土資料常設展   (第4回)
尾張藩の村絵図
期間:平成15年10月22日(水)〜平成16年4月18日(日)
場所:愛知県図書館3階 郷土資料展示コーナー(入場無料)


中嶋郡中野村図面
中嶋郡中野村図面(天保12年)
愛知郡菱野村図面
愛知郡菱野村図面(寛政5年)


 
尾張藩藩撰村絵図について

 尾張藩では、寛政期、天保期、弘化期などにおいて藩領村々に対し村絵図の調製と提出を命じている。現在、愛知県図書館と徳川林政史研究所に藩へ提出された絵図原本が残されており、本館では尾張国愛知・春日井・中島・海西、美濃国安八・石津・多芸・中島・不破各郡の内で140か村余を所蔵している。天保・嘉永期の絵図が主であるが、寛政期も3か村分ある。今回の展示では、これら尾張藩が作成した村絵図を紹介する。

 〇 寛政期の村絵図
 尾張藩が藩領村々に対し一斉に徴収を命じた最初の絵図である。絵図徴収の目的について「吉川村庄屋触状書写帳」(寛政3年)収録の触れには、「張州府志御用ニ付」とあり、村内にある田畑・山林・往還筋・小道・池・橋・川筋・井道等絵図面に書きあらわすことなどの作成仕様が記載されている。『張州府志』は宝暦2年(1752)に一応編纂を終えたが、寛政年間には補訂が行われていることから、この補正作業と関連があると思われる。本館ではこの時代の絵図正本3枚のほか、これらの絵図を縮写して郡別に綴った『愛知郡村邑全図』『中嶋郡村邑全図』『海東郡村邑全図』『海西郡村邑全図』を所蔵している。

 ○ 天保期の村絵図
天保度村絵図の作成については、天保12年(1841)4月29日付けの尾張藩触書(『新編一宮市史 資料編8』)により概略が分かる。絵図提出について「御側御用人衆被申聞候由、御勘定奉行衆被申聞候間」とあり、尾張藩側用人の指示を受けた勘定奉行所が、各陣屋を通じて管轄する村々へ絵図徴収を命じたことが窺える。同触により絵図作成仕様を次のように定めている。・蔵入(尾張藩直轄地)と給地(藩士の知行地)との地境、給地地境を明らかにすること。・ 村境、寺院・社地、用悪水等を色分けして調べること。・寛政期の調査と変化した所があれば明示すること。・上直紙4枚継、6枚継程度の大きさで仕立てること。絵図を見ると概ねこの仕様に拠って描かれていることが分かる。村絵図作成の目的については、領内の状況を把握するために行政上必要であったと思われるが、弘化期の絵図のように藩撰地誌である『尾張志』編纂に関係して作成された絵図もあったと言われている(『日本の地図−古地図にみる文化史』名古屋市博物館)。       これらの村絵図は、近代の地籍図等と比較して正確なものではないが、江戸時代の村落の様子を視覚的に把握できる貴重な資料である。また、絵図には村明細が記載されており、村の概要が分かるのが特徴である。





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